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ダス・フェアローレネ・パラディースⅡ -オルガチェイン 8 -

8

下腹部を這い回る生暖かい感触に、ジェイは目を開けた。何故だか身体を動かすことが出来ない。かろうじて首を動かすことだけは出来たので、顎を引いて視線を腹の方へ向けた。
そして、自分の今の有様を確認して愕然とする。
全身の装備を外され、全裸にされている。更にオニロクで縛り上げられ、両手両足とも動かせないようにされて砂の上に転がされていた。

下腹部に、パメラが顔を埋めている。ジェイのペニスを、熱心に唇と舌で弄っていた。ちなみにパメラは、ガブラスーツ一式を纏ったままである。
不意にパメラが顔を上げる。
二人の目が合った。
「あはっ……目が覚めたかい?」
ほんの少しだけ照れくさそうな顔で、パメラが言った。
「馬鹿な真似はよして、今すぐに縄を解け」
ジェイはそう言ってもがいたが、「老山龍が暴れても解けない」が売り文句のオニロクはビクともしない。

「縄は解くよ。終わったら、ね」
「終わるも何もない……そもそも始まらない。俺がどんな性癖の持ち主なのか、お前だって分かってるだろう」
「飛竜にしか欲情せず、飛竜でしか果てない変態」
パメラはそう言って立ち上がると、傍らに置いてあったフルフルホルンを手に取った。
「でも、きっちりあんたの×××の面倒をみてやるよ。あたしの手にかかれば、ゆり篭から墓場まで、どんな雄の×××でも必ずエレクトするのさ」
「こんな事をして楽しいのか……?」
「……ジェイ。あんたに「躾」られた飛竜達も、きっと同じ事を言いたかったと思うよ」
「……」
ジェイは思わず口をつぐんでしまう。

「なーんてね。
別にあたしは説教するつもりなんぞ、まったくないんだけど。
まあ、楽しいかと聞かれれば、あんま楽しくないよ。たまには正常位で男の背中に手を回して、爪を立てたりとかしてみたいやね。マウントするばっかじゃ傷つくじゃんか。ほら、あたしだってラージャン体型だけど一応女なわけだし」
パメラは苦笑する。
「でも、今は身体に火がついちまったから、贅沢は言ってられない。「いつも通り」の騎乗位で我慢する。じゃ、始めようか?」
そう言って、パメラはフルフルホルンの唄口に唇を寄せる。
奇妙な旋律が周囲に漂い始め、ジェイの耳を支配する。
しばらくすると、ジェイのペニスが隆々とそそり立った。赤黒い亀頭が大きく膨れ、血管が幾本も浮き出す。

スキル「威龍」――パメラの持つ特殊なスキルである。この「威龍」の旋律を耳にした雄は、どんな状況だろうと勃起してしまうという冗談のようなスキルだ。
ジェイが十分にいきり立ったのを見計らい、パメラは唄口から唇を離した。

「はは。すごいすごい」
そう言いながらパメラは、ガブラスーツフットの股部分に取り付けられたファスナーを下ろす。少々変わったファスナーで、エレメントがヒップの方まで伸びている。
パメラはファスナーを開け切ると、ジェイの身体を跨いで腰を落とした。すると、布の開いた部分が更に広がり、秘所が露になる。意外なことに、陰毛は綺麗に剃り上げていた。

「ほんじゃ、まあ」
パメラは、ジェイの亀頭に自身の秘所を押し当てた。
「やめろ……」
ジェイの顔に脂汗が浮く。
「ここまで来て、そんな殺生な真似は出来ないさ……いただくよ」
すでに十分潤っていたので、パメラは一気に根元まで入れ込んだ。じゅるり、というような音がして、二人の下腹部が一体となる。
「ああ……いいねぇ……すごく久しぶり……この感…触」
パメラが感に堪えないような声を出した。


「ぐ……」
一方のジェイは、顔面蒼白で苦鳴を漏らしていた。
胃の中の物が、逆流してきそうな感覚に見舞われている。
結合部が見える――ぐちゃぐちゃと粘着質な音を立て、自分のモノが出入りしている。否、させられているのが見える。
腕や脚は男のように隆々としているが、ジェイの陰茎を嬉々として飲み込むパメラは、紛れもなく女である。

女。
先日の桜火竜の時のように、一人の女の顔が浮かぶ――。

過去の心の傷が激しく疼いて、ジェイの頭の中を蹂躙する。精神の均衡を保てなくなりそうな癖に、パメラに出入りする陰茎は憎らしい程の硬度を保っている。その事実が、ジェイを更に苦しめる。

「オウッ……ジェイ! いいよ! すごいよ! 最高、あんたっ、最高!」
膝を立てたまま足を開脚し、もの凄い勢いで腰を上下させてパメラは快楽を貪る。
「くうう……カリが……カリが、あたしの中をけずるよぉ……」
パメラが、ジェイの身体の上に覆いかぶさり、食らいつくようにして唇を重ねる。ジェイは、精一杯顔を背けて逃れようとしたが、それは叶わなかった――じぅ、と音を立てて、派手に吸われる。

「唇だけは許して……ってかい? まるで遊女みたいで可愛いねぇ、ジェイ」
唇を離し、嗜虐的な顔でパメラが言った。

男を思わせる腕と足なのにあそこは女で女の声なのに女を強姦する男のような台詞で俺を責めるな……。

もう、精神が崩れてしまいそうだった。
パメラを見上げるジェイの目は、死人のそれのようだった。


だが次の瞬間、ジェイの目が「それ」を捉えて、ほんの少しだけ生気を取り戻す――「それ」に気が付いたのは、もしかすると生存本能のなせる業かもしれなかった。

ガブラスが目の前にいる――「飛竜種」のガブラスが。

当然、それは本物のガブラスではない。パメラの被っている「ガブラスフェイク」だ。だが、精神が崩壊しようかという一大事に、生存本能はそれを無視する。
そしてこの窮地を脱するために、生存本能がジェイに与えた解決策は――。

ガブラスとの直接交合という、ハードな変態妄想だった。

俺はガブラスとしている……飛竜としている……。
女の顔のように見える部分は、ガブラスの模様だ……。
しかし、このガブラスはよく鳴くな。
しかも、人語に聞こえたりする。いく、とか、出して、とか変なヤツだな。おやおや、身体がブルブル震えているぞ。もう果てそうなのか。ああ、俺も果てそうだ……。

「おおおおおおォォォォ……」
パメラが雄々しさすら感じさせる声を上げて仰け反り、豪快にオルガを得る。

「ぐうう……」
ジェイのペニスの中心を熱い塊が駆け上り、鈴口を押し開いてパメラの中に吐き出された。

そして、ほんの刹那の後。

激しい脱力感が一気に襲い掛かり、抗う暇もないままジェイの意識は闇に吸い込まれた。



目を開けると、陽が西に沈みかかっていた。
ジェイは身を起こした。すでにオニロクは解かれ、身体の上には野営に使うための毛布が掛けてあった。
辺りを見回してみたが、すでにパメラの姿はなかった。

パメラに何をされたのかは、残念ながらしっかりと覚えていた。お情けのように身体の上に掛けられていた毛布が、ジェイには恨めしかった。

ジェイは大きくため息をついて、そのまま後へ倒れこんだ。

――こんな事をして楽しいのか……?
――ジェイ。あんたに「躾」られた飛竜達も、きっと同じ事を言いたかったと思うよ

パメラとのやり取りが想起された。
パメラの言ったことはなるほど、正論過ぎるほど正論だった。

仮にモンスター達に人と同じだけの感受性があったとしたら、どう思うのだろうか。俺に「躾」られた飛竜達も、今の自分と似たような心境になったりするのだろうか。

再び、ジェイは大きくため息をついた。


数日後の夜――ジェイはバズと馴染みの酒場にいた。

バズの左目の周辺には、青タンが出来ていた。

「まあ、確かにパメラが「博愛主義」なのは言わなかったけどよ……」
バズがむくれる。
「何も殴るこたぁねえだろうが。大体だな、竜ならしのジェイともあろう者が女に無理チンされるなんざ、いい名折れってもんだ」
「黙れ」
「口惜しかったらヤり返して来い」
「……立たん。それに、あいつが喜ぶだけだ」
ジェイは不快そうに顔をしかめて、エール酒を呷った。

「はは……違いねえ。だがな、ジェイ」
バズが軽く笑い、つまみとして出されたケルビの子袋を口に入れた。
「今回のことは大目に見てやってくれよ。あいつはあれで可哀想なヤツだと俺は思うんだ」
ジェイは新種のモンスターを見るような目でバズを見た。
「考えてもみてくれ。一緒に仕事した仲間を縛り上げて無理チンするってことが、どういうことなのか」
「……」
「それってよっぽどのことだと思うぜ。単に出し入れがしたかった、てな感じじゃねえな」
「……随分好意的に解釈するんだな。それならお前が相手をしてやれ」
「腹の肉がつっかえて届かねえから無理」
笑いながら頭を掻き、バズはエール酒を呷った。

「あいつ、寂しかったのかもな。ハンターってのは基本的に孤独な人種だろ? しかもウチの店に絡んでくるヤツらは特殊な性癖のせいで、更に孤独感が強いと思うんだ」
「……それは否定しない」
ジェイは軽く頷いた。

「その孤独を、ほんの一時でも打ち消したかったのかも知れんな。えらく即物的で、しかも不器用なやり方だが。……とか言って、ほんとはただヤりたかっただけかも知れんが。まあ、本当のことはパメラにしか分からん」
「そうだな……」
「しかし、俺とお前の変態二人が女の話しで盛り上がるとはな。まあ、ラージャン調の女だから、俺らに相応しいと言えば相応しいか」
がはは、とバズは豪快に笑った。
「……確かに」
バズの言い草に、ジェイは苦笑しながらエール酒を呷るのだった。




                                                        
                                                                                  ― 了 ―

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