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ダス・フェアローレネ・パラディース2

「桜火竜か……」
 気性の荒い雌火竜の亜種。強力なブレスと毒の尾の犠牲になったハンターは、それこそ星の数ほどいる。通常はギルドを通してハンターを複数募集し、パーティーを組んで狩る相手であるのだが――。

「お前も知っての通り、ギルドはうちの店の依頼は受けてくれん」
 そうバズは嘆くが、そもそもギルドに敬遠される原因を作っているのは、当人の方なので仕方がない。
モンスターを性具にするためという、依頼の動機が多分に不埒なせいもあるが、それよりも、以前きちん
と報酬を支払わなかったことでギルドとトラブルになったのが主な理由だと、ジェイは漏れ聞いている。

「とある変態資産家様が、桜火竜を所望している。しかも『躾』が済んでいる桜火竜がお望みだ。報酬は
二、三年遊んで暮せるくらいの金額だぜ? お前の趣味にも合致して――」
「やかましい」
 バズの言葉を、ジェイは遮った。
「俺が『躾』ていいんだな?」
「『竜ならしのジェイ』以外の誰が、あんな化物を躾けられる?」

「しかし、探し出すのが大変そうだ」
腕を組みながらジェイが言う。原種のリオレイアはこれまでに幾度も討伐し「躾」の経験もある彼だが、
桜火竜にはお目にかかったことがない。

「それについては、当たりがついている」
「そうか。ならば、やってみよう。いつものヤクを仕入れといてくれ。それから拘束用の道具一式が要るな。
強度の高い物を頼む。できればオニロク製の物が望ましい」
「了解だ。変態ハンター様」
「お前が言うな」
 じろりとジェイが睨んだ。こわいこわいと、バズが首を竦める。

「まあ、そう怖い顔をするな。ギルドに村八分されてる者同士、これからも仲良くやろうぜ?」
「……」
 逆鱗に触れたのだろうか、先の時とは比べものにならないくらいの鋭い眼差しをジェイに向けられ、流石の
バズもたじろいだ。
「……まあその、なんだ。一人じゃ若干苦労するかも知れないが、お前なら大丈夫だろう。頼むぜ?」
「……ああ」
 短くジェイは答えた。


 昏倒した桜火竜に対し、ジェイはまず麻痺剤を投与することにした。突然覚醒し、暴れないようにするためである。右足の付け根辺りにナイフを入れる。硬い皮膚を裂き、筋肉を掻き分け、太い血管を探り出し、注射器で麻痺剤を打ち込んだ。麻痺剤はドスゲネポスの麻痺液や、毒キノコであるマヒダケを混合して作った特製のもので、通常のものより効き目が強くて長い。
 
 目を閉じたまま横臥する桜火竜の身体が、ビクビクと波打ち始めた。
 ジェイはそれを見届けると、枯枝を集めてきて火をつけた。ある程度火に勢いが出てきた所で、ポーチから赤みを帯びた玉を取り出して火にくべる。やがて、赤色の煙が空へと昇ってゆく。
 
 しばらくすると、丘の麓の方からガラガラという音が聞こえてきた。視線をやると、二匹のアイルーが荷車を押してくるのが見えた。荷台には、皮製の大きな袋が二つと、ジェイの身の丈程もある木箱、それに大樽が二つ載っている。
『毎度ニャ!! ご指定のお荷物をお届けにあがりましたニャ!!』
 二匹のアイルーは揃って言うと、ペコリと頭を下げた。

「ここへ降ろしてくれ」
 そう指示すると、アイルー達はてきぱきと荷物を降ろした。ジェイは荷物を降ろし終えたアイルー達に代金を渡した。
『またのご利用、お待ちしてるニャ!!』
 そう二匹は声を揃えて言うと、素早く去って行った。

「さて、始めるか……」
 ジェイは呟くようにそう言うと、まず片方の皮袋に手を伸ばした。口を縛っている紐を解き、袋の底の方を持ってひっくり返すと、中から大量の荒縄が出てきた。更にもう一つの袋からも同様にして荒縄を出した。
 
 次に片方の樽の蓋を取り外す。中には水が入っている。柄杓で水をすくい、地面の上に置かれた荒縄にかけてゆく。荒縄は貪欲なまでに水を吸い、長さ太さともに、あっという間に十倍近くにまで膨れ上がった。
 ジェイは縄を手にすると、桜火竜の身体を縛り上げる作業を開始した。慣れた手つきで縄を打ってゆくものの、身体の大きさが作業の進行を阻む。途中、二度ばかり鬼人薬と強走薬を飲んで作業を続けた。
 
 結局、半時程の時間を費やして縄を打ち終えた。
 そこまで来て、ジェイはやっとのこと身に着けているアーマーを脱ぎ、インナーのみの格好になった。
 レウスXシリーズの下から現れた浅黒い身体には、やや過剰なまでに筋肉がついていた。ガンランスを振り回す左腕は、右腕よりも断然太い。首も太い。その上に乗っている顔は、その身体つきにふさわしく、厳つい。黒い頭髪は短く刈り込まれており、濃い眉の下には黒目がちの瞳。美男ではないが、男の色気が匂い立つような顔立ちをしている。        
 
 ふう、と大きく息をつくと、ジェイは縄を打たれた桜火竜に目をやった。身体を緊縛しているのはオニロク製の荒縄である。稀代の縄造り師であるオニロクが「竜縊りの蔦」という植物を原料に様々な加工を施し、丹精込めて仕上げた逸品だ。
 
 見た目は単なる荒縄だが、その強度、柔軟性は右に並ぶ物はなく「老山龍が暴れても解けない」が商品のキャッチコピーになっている。
 やがて、桜火竜の身体から痙攣が無くなった。次いでゆっくりと目が開かれる。
『キュウウウウー!!』
 目を開けた桜火竜が、喉の奥で細い鳴声を上げた。口元もオニロクで縛られているので、口を大きく開けて咆哮を上げることは叶わない。

                                                      ―続く―
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